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ばんえい記念観戦記

20060403_1今年もばんえい記念が終わった。
実際に現地で見た今なら、それがどれだけぽっかり寂しいものか肌でわかる。当日のことを少しだけ回顧。

朝、1レースが始まる前からスタンド内は大賑わい。
食い入るように新聞を読む人の数を見ると、今まで見てきた「まったりした競馬場」のそれではない。氷点下近いだろうスタンド外との温度差は、ゴォゴォと唸るヒーターのせいばかりではないようだ。
なんだろう、ここにいる人々から感じるこの熱気は。
これが1年間あらゆる人から聞かされてきた特別な日『ばんえい記念』なのだと朝一番にして気づかされた。
ただそのレースを見んがために、道内はもちろん全国から人々を引き寄せてしまう力。
年に一度、1トンもの重量を曳いて競いあう、ばんえい競馬の頂点『ばんえい記念』。
不思議なレースだ。

寒さに行き場を迷いつつ、スタンドの内外、コース沿いを往来する午前。
昼過ぎになると、スタンド内の話題は、目の前のレースからばんえい記念へとシフトしはじめる。朝から断続的な雨を少しずつ吸い続けた馬場は、あの馬にとって、この馬にとって、吉と出るか凶と出るか。
温かい昼食を摂りながら、ばんえい記念発走のときが近づいてきたことを肌で感じる。
寒がっている場合じゃない。大一番はこれからだ。

パドックがはじまると、一番の注目点はやはりスーパーペガサスの気合。
このレース四連覇がかかっているが、岩見沢では惨敗した姿を見ている。今回は大丈夫だろうか?
彼の場合、イレ込むくらいがちょうどよい気合だという。
この日はパドックで立ち上がるなど、気迫は満点。
岩見沢記念のときとは、明らかに目つきが違った。
これならいける!

コース沿いに場所を移し、スタートまでの間もドキドキして止まらない。息すらひそめ、そのときを待つ。
ゲートが開いた。
各馬そろってスタート、一歩目を踏み出す。何度も見てきたその動作、いつもならばここで馬に合わせて駆け出すところだ。しかし、1トンという数字は私が考えていた以上に重かった。
普通のレースならむしろ駆け抜けてしまえる第1障害。ゲートからそこまでたどり着く平坦な道のりを、これほど長く感じようとは。
だが馬たちに焦りなどない。ただ、前に前に、一歩ずつ踏みしめて進む。
応援する観客たちも、おそらくは自分の発する声も耳に入ってはいない。
伝わってくるのは、目の前の馬たちの呼吸と1トンのソリを動かす気迫のみ。
馬たちの吐き出す息が白く、長い。
コース半ば、すべての騎手が馬を止める。目の前には第2障害。その大きさは第1障害の比ではない。息を整えなければ上がれない。馬の呼吸と騎手のGOサイン、すべてのタイミングを重ねるべく、静かに時が止まる。
一瞬の決断。
何頭かが脚を上げ進み出すと、場内は完全に興奮のるつぼと化した。

ザクッザクッと、砂に深く蹄跡を刻みながら、ばん馬たちが障害を登ってゆく。
自分の脚で、自分の意志で。
砂煙が舞い、息はますます白い。歓声はもう、大きすぎて耳にも入らない。
一頭が、体一つ躍り出た。明るい栗毛の馬体に金色のタテガミ。岩見沢以来、モニター越しでしか見られなかったスーパーペガサスの雄姿。
「ペガサスー!!」
叫んでいた。叫びながら走り出していた。そうでもしないと追いつかない。周囲の人々も次々とペガサスを追って走り出す。一気に坂を下りきり、ゴールへの直線を独走しはじめたスーパーペガサスは、他の追随を許さなかった。
一度、観客の
「ゆっくりでいいぞ!」
との声が聞こえたのか、立ち止まり、大きく息をつくスーパーペガサス。
それでも2番手ミサキスーパー以下につけた差は既に決定的。
四連覇を見事に飾る圧勝劇だった。

2着、3着と次々に各馬がゴールインすると、観客から自然と拍手がおこった。
ただ1頭、アンローズだけが障害を越えることができずに競走中止してしまったが・・・。
牝馬とはいえ、彼女だって一線級の牡馬相手に重賞を戦ってきた猛者であることに変わりない。
改めて1トンという重みを見せつけられた瞬間だった。
きっとまたどこかで、強いアンローズの復活劇を見せてくれることを期待しよう。

レース後、私も友人も、涙を止められなかった。
周りを見渡せば、同じような光景があちこちに見受けられた。
誰が勝者かに関わりなく、ただただ、レースの迫力と熱い空気に揺さぶられて、どうにもならなかったのだ。

よくわからないという人には、モニター越しでは決して伝わらない、ばん馬たちのナマの生命力を体感しに、ぜひ現地で生観戦してもらいたい。きっと、翌年もまた見に行きたくなってしまうに違いない。
そう思った「初・ばんえい記念生観戦」だった。

20060403_2

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コメント

こんばんは、ブログ開設おめでとうございます。
湊さんの観戦記読んで、また当日のことを思い出し、
涙しております(*ノ-;*)エーン
まだまだ泣けるんですよ~困ったものです(汗)
ほんとに朝から空気感が前日とはまったく違いましたもんね!
私も何があっても来年も行きます!
今年ずっとばんえいを応援してファンを増やしたいなと思います!
また帯広にみんなで集結しましょ~!!

投稿: nami | 2006年4月 3日 (月) 23時43分

いや、これは名文です。
僕も、なんだか泣けてきてしまいました。

>「好きな馬が勝ったから」ではなく、
>ただただ、レースの迫力と熱い空気に揺さぶられて、どうにもならなかったのだ。

これ、すっごく共感します。
僕は、この空気を味わいたいが為に、各地を遠征しているんだ、そう思いました。

投稿: landslider@地方競馬に行こう! | 2006年4月 4日 (火) 02時02分

>namiさん
コメントありがとうございます。
もっと多くの人に見てもらいたいと、切に思いました!
言葉だけじゃ伝えきれないんですよね。
来年ももちろんまた帯広でお会いしましょう!

>landsliderさん
ありがとうございます。
本当に行ってよかったです。
今回の旅は、自分の原点に戻れたような、そんな気がしました。

投稿: 湊 | 2006年4月 4日 (火) 12時26分

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